フィンランド語の文の構造 (3)

主語

フィンランド語には,主語に相当する文の成分が主格で現れない構文がある。例文 (5) のような属格主語構文がその例である。

(5)a.Peka-ntäyty-ylähte-ä.
ペッカのねばならない出かける
「ペッカは出かけなければならない」
b.Peka-nonhauskalähte-ä.
ペッカのである楽しい出かける
「ペッカは出かけるのが楽しい」

また,主語がない文が頻繁に現れる。これらの文は主語が省略されているというのではなく,英語の 「仮主語」 の it に相当する語がフィンランド語では用いられないための現象であることが多い。とくに (6) の構文では,意味の上では主語と考えられる名詞が文法的には目的語として現れている。

(6)Sata-akovasti.
降る激しく
「(雨が) 激しく降っている」
(7)a.Pekka-aväsyttä-ä.
ペッカを疲れさせる
「ペッカは疲れている」
b.Pekka-anauratta-a.
ペッカを笑わせる
「ペッカは可笑しい (= 笑いたい)」
更新日:2006/01/16 — Copyright © 2006 by Kazuto Matsumura